力行のシミュレーション(概要)

定トルク制御(定加速度領域)

モーターに電流を流して電車は発車します。しかし、電動機は、低速域のトルクが大きく、速度が上がるに従ってトルクが低下するという特性を有しているため、発車時にトルクを抑制しないと、空転したり、過剰な電流が流れるという問題が発生します。そこで、一般的な電車は、起動時には電流を抑制してトルクを一定値に保ち、速度が上がるにつれて抑制を解除しています。
具体的には、電動機の電流が一定となるように制御を行います。このような制御は、例えば、抵抗制御車の場合は速度に応じて抵抗を繋ぎ変えることで行い、チョッパ車の場合はデューティ比を変更し、徐々に電圧を上げることで行います。また、インバータ制御車の場合、トルクが一定になるようにインバータ周波数と電圧を上げていきます。いずれの場合も、モーターの出力が最大に達するまで同じトルクを保って回転数が上昇していきます。
定加速度領域では、加速度が変化しないため、式(1)を適用することができます。

F = m・a = 列車の全重量[kg]×加速度[m/s2] = 編成にかかる力[N] = 引張力[kgf] * 9.8 ・・・ 式(1)

定出力制御(定出力領域)

定トルク制御が終了すると、架線からモータに電力がそのまま供給されるため、出力がピークに達します。抵抗制御車の場合、抵抗が全て無くなった状態です。
すると、回転数を上げるほど電動機の内部抵抗が増え、速度に反比例して電流が、速度の二乗に反比例してトルクが低下して行きます。
そこで、電圧以外によって、トルクの低下を抑制する制御が行われます。定出力制御中は、電圧は最大になったままで、電流を一定に保つ制御が行われるため、出力が一定になります。
具体的には、界磁に流れる電流を弱めて電機子の磁束を抑える制御(弱め界磁制御)や、すべり周波数を上げることで電流を維持する制御が行われます(すべり率制御)。
抵抗を用いる場合、弱め界磁に入ってからも、例えば界磁85%→70%→55%といった具合にノッチの進段が続きます。界磁を連続して変化させられる場合は、常に同じ出力となるように動きますので、グラフを描くと、速度と電流はマイナスの比例関係になり、速度とトルクは反比例しているように見えます。
定出力制御中は、出力が一定なので、式(2)を適用することができます。

仕事率 = 力の速度成分×力 = 重量[kg]×速度[m/s]×加速度[m/s2] = 出力[W] ・・・ 式(2)

特性領域

定出力制御が終了すると、モータの特性に任せてトルクが落ちていきます。誘導モータの場合はすべり周波数の下限に達したら、特性域に入ります。定出力域で加速力は速度に反比例するのに対し、こちらでモーターの特性がそのまま現れ、電流は速度に反比例、トルクは速度の二乗に反比例して落ちていきます。

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