制動のシミュレーション(空気ブレーキ)

算出の基本

空気ブレーキによる制動力は、以下の式によって求めることができます。

制動力[N]=ブレーキシリンダ圧力×ブレーキシリンダ面積×テコ比×効率×摩擦係数

これにブレーキシリンダの個数を乗ずると、一両あたりの制動力が算出できます。
テコ比はブレーキ倍率とも呼ばれ、台車の設計ごとに異なります。
効率はテコによる機械的損失を引くためもので、およそ0.9前後の値がよく使われます。

摩擦係数の変化

少し厄介なのが摩擦係数で、天候や速度によって大きく変化します。
静止時の摩擦係数は、晴天時0.25~0.30、雨天時0.2、降雪時0.1程度になることが知られています。例えば、JRでは電車0.245、直流機関車0.265、交流機関車0.326を通常の摩擦係数とする例があります。

図1 摩擦係数の速度依存性 (出典:RRR 2009.1 「列車を安全に止める制輪子」)

さらに、摩擦によるブレーキは、速度に依存して摩擦係数が変化するという特性があります。図1は、制輪子の材質ごとの速度依存性を示したグラフです。このように、制輪子の材質や速度によって摩擦係数は動的に変化するため、これらの特性を考慮して制動力を算出する必要があります。

列車のスペックとして、非常ブレーキの減速度が記載されていることがありますが、速度によって摩擦係数が大きく変わるため、「スペック値が出る速度が何km/hであるか?」を推定する必要があります。記載されている減速度は、概ね以下のパターンのいずれかであることが多いようですが、明示されている資料はほとんど見られません。

  • ある速度(例えば、30km/h)における減速度
  • ある速度域(例えば、0-60km/h)における減速度の平均

列車のブレーキスペックを推定する上での難関とも言えます。