JRのATS

ATS-S

1962年の三河島事故により、車内警報と列車停止装置を連動させたATSが全国に設置されました。
信号機の外方一定距離に地上子を設置しておき、停止信号の情報を受けると車内では赤色灯が点灯してベルが鳴動します。5秒以内に確認を行えばベルは止まりチャイムに変わりますが、確認を行わないと非常ブレーキがかかります。チャイムは、現示が変わってから手動で止めます(検知できる速度は130km/hまで)。この地上子は、一番ブレーキ性能の悪い列車が最高速で走ってきた場合でも止まれる位置にあります。
また、ATS-Sには、分岐器速度制限装置という機能があり、ポイントにオーバースピードで進入する列車を止める働きがあります。ループコイル式分岐器速度制限装置は、地上子にループコイルが併設されており、差し掛かった時間と地上子を通過した時間を地上で計測し、速度オーバーであれば停止現示と同じく警報を鳴らします。しかし、仕様上の問題で60km/h以上の制限をチェックできないという欠点も持っています。

ATS-SN

S形には、確認さえすれば、停止現示を越えられるという欠点がありました。そこで、JR東日本によって従来の機能に加え、停止現示を越えようとすると問答無用で非常ブレーキを動作させる機能が追加されました。さらに、S形はその路線で一番性能の低い車両にあわせて作られていたため、十分に減速できる距離があるにも関わらず遥か手前で警報が鳴り、運転士の注意力が低下するという欠点を持っていたため、これを埋めるために高減速車両の識別を行うようになりました。
また、分岐器速度制限装置も改良されています。これは、緑色の小型地上子を2つ使い、通過時間で判定をするものですが、高減速車両が差し掛かったときと、それ以外でタイマー(地上タイマー)の値を変え、「警報を鳴らす速度」と「直ちに非常ブレーキをかける速度」をその都度計算します。ちなみに、任意の速度での速度照査が可能なため、分岐器の手前にいくつか置いてあります。S型と違い、60km/h以上の速度もチェックできます。
なお、通常の赤信号手前にある警報用地上子(ロング地上子といいます(白色))、信号機の直下にある地上子(緑)、速度照査用の地上子(緑)のほか、赤信号なのに誤って発車することがないように信号機手前で止める「誤出発防止用地上子(赤)」、車止めに突っ込むことがないように手前で止める「行き止まり線用地上子(緑)」といったものがあります。

誤出発防止用地上子
速度照査用地上子

ATS-ST

JR東海が、ATS-SNを拡張して作った仕様です。
ATS-SNに加えて、速度照査情報を送受信するのが特徴です。SNと同じく、地上子2つを通過する時間で判定しますが、車両搭載のコンピュータが時間を測ります。標準時間は0.5秒で、照査速度は地上子の間隔で設定します。こうすることで、車内で計測する時間を変更することで、その列車の減速性能に応じた速度照査ができます。ちなみに、電車は0.5秒、機関車は0.55秒となっていますが、そのほかにも全10パターンをセットすることができます。なお、制限速度を超過した場合は、その場で非常ブレーキがかかります。しかし、停止信号に対する防御しか行っていないため、Y現示、YY現示の速度超過しかチェックできません。600m手前で警報はしますが、猛スピードで突っ込んできた場合は対応できない場合があります。通常の地上子は白、信号直下の地上子は橙、速度照査用の地上子はダークグレーとなっています。

ATS-SW

JR西日本が作った仕様で、ATS-SS、ATS-SKも同一です。
速度照査方法はATS-STと同一ですが、車内モニタを搭載し、マイクロプロセッサを用いた小型受信器を搭載しています。通常の地上子は白、信号直下と終端用の地上子は橙、速度照査用の地上子はダークグレーのほか、ATS-SNと同じ地上速度照査用の地上子は緑です。

ATS-P

停止現示までに確実に止まれるブレーキを目指して作られたパターン式ATSです。地上子からは、信号機や制限速度までの距離情報を読み込み、列車上で減速するためのパターンを生成します。このパターンを超えると、常用最大ブレーキが動作して指定速度まで減速します(自動ブレーキ車両は非常ブレーキが動作)。停止現示だった場合は完全停止するまでリセットできません。それでも停止信号の直下を通過してしまうと非常ブレーキが動作します。距離情報は地上子から読み込むため、途中で現示が変わっても、次の地上子を踏んで情報を更新するまではパターンは保持されるので注意が必要です。パターンに50mまで近づくと、パターン接近灯が点灯します。設計では、ブレーキ開放をして10km/hで停止信号を超えると、15km/hで無閉塞運転を行えるようになっていますが、会社によっては禁止されています。
なお、制限情報がないときは、3閉塞先を停止現示と仮定します。これにより、情報を取りこぼしたときも3閉塞先で自動停止するようになっています。地上で通信を行ったという情報をGETすることもできるため、北越急行ではこれを利用して、681系・683系が3閉塞以内に近づいたらG現示をGG現示にしていました。

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